たが文か すみの薄れに指よせてうつりゆくこそ井戸端なりけれ
たわいもない話で盛り上がり、議論された痕跡。なにげない日常の記録。吐露、独白。これらの文章はいつ頃書かれたものだろうか。紙に墨で書かれた文字が風化で薄れゆくように、隅のテロメアはかすれて薄くなってしまっている。これらの文章は誰が書いたのだろうか。ぼくらは、墨で書かれた薄れゆく文字にそっと指を乗せるかのように、隅のテロメアにそっと指を寄せて、かつての作者に想いを馳せる。名を知り、いまはいないことも同時に知る。人々が、文化が、雰囲気が、価値観が、コミュニケーションのありかたが、移り変わっていく。うつりゆくのはコミュニティの本質であり、それを観測できるのは「井戸端」という不変の場所があるからなのだろうな。