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『今いる場所で突き抜けろ! ――強みに気づいて自由に働く4つのルール』

更新日:2023.12.11 作成日:2023.12.11

「好きなことで、生きていく」「“好き"を仕事にする」『「やりたいこと」を追い求めよう』「情熱に従おう」など、自分の好きなこと、やりたいことを追い求める文化に待ったをかける。

「好きな仕事で自由に働きたい」と、希少で価値のある「条件」を要求するならば、見返りに希少で価値のある「スキル」を差し出さなければならない。需要と供給の関係だ。この希少で価値のあるスキルを本書では「キャリア資本」と呼んでいる。自由な働き方をしたいのなら、まずは希少で価値のあるスキルである「キャリア資本」を貯めないといけない。この考え方には納得感がある。僕たちは、インフルエンサーに背中を押され勇気をもって「ブロガー」「YouTuber」になるといって会社を辞めた人の末路をたくさん見てきた。もちろん中には成功した人もいるかもしれないが、この方法は再現性があるとは言い難い。

著者は『そもそも「やりたいこと」なんてめったに見つかるものではない』というスタンスを取っている。インタビューや研究を通じて「もっとも幸福で、もっとも熱心な人は、「やりたいこと」を追い求めた結果として職に就いた人ではなく、自分の仕事のスキルが上達するまで長い時間をかけてがんばってきた人」、「好きだから仕事にするのではなく、仕事をしていったから仕事を好きになる」ことを解き明かしたからである。確実性が高く、再現性のある方法として「キャリア資本」を獲得して、投資していくことを勧めている。 「キャリア資本」を獲得して磨き上げることに必要なのは「意図的な練習」である。これは簡単なことではない。積極的に脳に汗をかくような、自分のコンフォートゾーンからはみ出したトライを続けなければならない過酷な訓練である。そして、未熟な状態で出した自分の実績に対して適切なフィードバックを受け続けなければならない。しかしながら、この「意図的な練習」なしには、すぐに「プラトー」と呼ばれる停滞期に陥ってしまい、そこから先に進めなくなってしまう。練習を日常の一部にするために、時間計測してログを取る。これらは、習慣化についての本を参照したい。

「情熱」や「ミッション」に対しても同様に簡単には見つからないという姿勢を貫いている。「情熱」に対しては「どの仕事に情熱を持てるかわからない」としている。「ミッション」に対しては「隣接可能領域」という概念を持ち出し、アイデアとミッションの類似性を述べた。これは、「どんな分野の新しい偉大なアイデアも、現在の最先端のすぐ先、現在あるアイデアの新しい組み合わせを含む隣のスペースに見つかる」ということからミッションも特定の分野のフロンティアに立たないと見えてこないことが多い。 本書を読んで思い出したのは、「情熱は見つけるものではなく育むもの」という考え方だ。 天職を見つけることにとらわれてはいけない。その代わり、希少で価値のあるスキルを上達させること。スキルが生み出すキャリア資本を積み上げ、それを賢く再投資する。キャリア資本を使って仕事とそのやり方を自分でコントロールする。次に人生を変えるようなミッションを見つけ出して実行する。

一夜にして自分にぴったりの仕事が見つかるなんて幻想とは程遠く、地に足をつけたもっともらしい著者の考えに私は賛同する。

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